2008年12月12日金曜日

インド: ガヤ〜ラージギル

・ ガヤへ 狂犬におびえる & 電車を永遠に待つ & ゴミかぶる。
ガヤへの電車に乗るべくまだ暗い朝4時に宿を出る。旧市街は電灯もなく真っ暗でヘッドライトが役に立つ。
犬が狂ったように吠えている。初日にリクシャーから聴いた「最近旅行者が犬に噛まれた」というまさに周辺で、恐ろしい。でもきっと大丈夫、と細い路地を歩いていくとヘッドライトに光る二つの目。明らかにこちらを威嚇して吠えまくっている。これはまずいと引き返し、一旦ガンガーに出て河沿いを歩いたら大丈夫だった。真っ暗な中でも、たまに人がいた。

最初に見つけたリクシャーに乗ろうとすると、昼の5倍の値段をふっかけてきた。「この時間だからね、俺のに乗らないと歩く羽目になるよ」などと強気だが既に他のリクシャーが先に見えているのによく言えたものだ。すぐに去ってまともな人を探した。深夜の街は昼の喧噪が嘘のように静かで暗かった。通行量も少なく、運転もスムーズですぐに駅に着く。

しかし、超早起きして犬に怯えガンガーの日の出も見ずに頑張って駅に来た甲斐はまったくなかった。
電車はずるずると遅れ続ける。15分単位とかで到着予定時刻がずれていくので、絶え間なく流れる電車の遅延到着アナウンスを聞き続けなければならず、心休まらないし、駅の外で時間を潰すわけにも行かない。駅には待合室もベンチもなく、寒くて疲労困憊である。
空がすっかり明るくなった頃、30分の遅延追加がアナウンスされたので一度駅を出て炭を炊いている屋台でサモサを食べて待つ。屋台の周辺は土の上でたくさんの穴が空いており、ねずみが走り回っている。屋台のおじさんの足下からもちょろちょろ。おじさん曰くベストフレンド。長い間一緒だから情も移るだろうなあ。と、十分時間をつぶして戻ったつもりだったがそれからまた一時間以上ずるずると遅れた。結局4時間半遅れである。列車の途中乗車はそれまでの遅れを全部かぶることになるのでよくないということを悟った。

予定は崩れて、その後の保険の列車チケットを追加で取り直すはめになった。
バスにすればよかった、とかなんとか思いもしたがこれもまたインド体験。自国の感覚で予定を立てたのが誤りだ。ブッダが数ヶ月かけて歩いた道のりの逆を午前中で済まそうとしているのに何ごちゃごちゃ考えているのだ、とごちゃごちゃに追加が加わった。

道中、電車の中の床掃除する浮浪者風おじさんがいた。すごい料のゴミがすぐに集まる。しかし、残念なことに集めたゴミを私の横の窓から放り出してしまった。もちろん土に帰らない物も多数。多分仕事っぷりをアピールしたかったんだと思うが、わざわざ私の窓の横から放り出したため、荷物ともども埃をかぶった。
そして彼は執拗に私に金を要求してきた。しかも金額指定。

私は彼のしたことが「やらないほうがまし」なことだと思ったので、そう言って払わない姿勢を見せるが、英語は通じていない。彼は結構な剣幕で何度も私をつつく。そこそこ裕福そうな周りの人に通訳してくれと頼むが、してくれない。彼らは自分は払っていないくせに私に払えのジェスチャー。お互いにあまりに譲らないのでようやく一人が通訳したのか何かを伝えて、それで終わりになった。お互いにいいと思っていることが違うとやっかいである。

・ ガヤからラージギルへ
車窓からは乾いた土地、ちょうど刈り入れ期の田園地帯が続く。
ガヤからはバスでラージギルに向かう。ヴァラナシで電車待ち友になったロシア人カップルともうブッダガヤに行ってしまおうかなという誘惑もあったが、今日はラージギルの日本寺の勤行に参加して泊めてもらうつもりでいたので、別れる。

しかし、駅からバス停にいくのも一苦労。
馬車、自転車、人、バイク、オートリクシャー、リクシャーワーラー、車、バス、と様々な速度と大きさの乗り物が中央線もない狭い道を行くのだから大変。更に牛が道をふさいでいたりする。しかも運転手は全員インド人とあればその混沌状況は想像に難くないはず。

2時間といわれていたバスの旅も約2倍かかる。悪路に屋根まですし詰めのバス紀行は苦行。奥の人が一人降りる度に大移動が発生して停止。ラージギル到着は当初は午後すぐの予定が、結局はもうすっかり真っ暗になったあと。日本寺の勤行の時間も終了し、今からおしかけるのも迷惑になりそうだし、このあたりは夜の移動は厳禁らしいので、バス停から一番近い小さな家族経営の宿に泊まった。

・ インドで初お酒
朝からまともな食事をしていなかったので腹ぺこ。宿の主人に何かいいとこ知っているか聴くと、俺が作ったの食べるか、という展開に。喜んで受けるもできるのは1.5時間後というので小腹を見たそうと表に出てみた。小腹満たしてふと見るとインドに来て初めて表だってお酒を売っている場所を見つけた。
東部だし、仏教の聖地だし、イスラム勢力は弱いからか。
(まあ、仏教徒も飲酒は禁止なんだが)

ついインドのビールに好奇心が出てバーに吸い込まれてしまった。KING FISHERというこの地方のビールの大瓶が1本 70Rpとインドの物価ではとっても高い。味はフルーティー。思ったよりいける。アジアのビールではかなり上位。半分くらい飲んで満足したので、後は合席したインド人にあげて宿に帰る。
バーは薄暗く、ヌード写真が張ってあったりして、男が隠れて飲む的な雰囲気だったが、繁盛していた。

本当は今頃お寺の宿望で煩悩と闘っていたはずが、なんという展開。

宿の食事はカレーを中心としたよくあるインドの家庭料理。おいしかった。
仕事は子供が色々やってくれるのだが、何かするたびにチップを期待する視線が突き刺さり、ある時に部屋から出て行かなくなったので、10Rpのおこずかいをあげる。宿代が 150Rp ということを考えるいい額だと思うが、次回からも視線を感じ続けた。
ご飯代の請求はなかったので、チェックアウト時に 50Rp渡してお礼を言った。

この日、旅で最後の洗濯をした。
宗教施設に入る際に靴を脱ぐ機会が多いので、靴下が尋常でなく汚い(裸足で歩き回った後、汚い足で靴下を履くので)。
デリーで「すごく汚かったから」という理由で靴下のランドリー金額が2倍請求されたことに納得してしまった。

・ ラージギル 街 Rajgir ★★
ラージギルは山賊被害もあると聴くので、本日は不要な現金を宿に置き、自前の錠をかけて出発。カメラのメモリカードも入れ替えた(このカードがカメラと共にコルカタで盗まれたので、この後の写真が基本的に無い)。

ここでは、馬車がメインの移動手段であるが、メインの馬車スタンドまでは各国仏教施設を眺めながら歩く。
ベンガル寺に行ったら、僧侶に今晩泊まっていけと誘われた。日本人の僧侶も一人いるそうな。大変魅力的であるが、旅程的に今日中にブッダガヤーに行っておきたかったので、残念ながら断念。

・ 竹林精舎
国王から寄進されてブッダの教団が活動した場所。鐘の音が諸行無常の響きのする方ではない。
下手に整備されていて趣はない。単なる寂れた公園的で、瞑想場所は閉ざされていた。

現地の僧たちが人々に講和を行っていて、まだ仏教がインドでも生きているのを感じた。しかし、彼らはチケットを買わずに入っており、抜け道から出ようとしたところを捕まって怒られていた。

その横にある、昨日泊まり損ねた日本山妙法寺 も覗いてみる。人気が無いので、広い本堂を覗かせてもらう。
開祖らしい人のカラー写真が大きく本尊近くにあるのと、何妙法蓮華経のお題目を目にするので、日蓮宗系の新宗教らしいことは分かった(ここは法華経が説かれた、日蓮宗系にとっての聖地中の聖地)。また、世界各地にお寺を持っているらしいことも飾られた写真から分かった。

(果たしてそうであった。Wikipedia によると、成田空港の軍事利用ができないのはこのお寺の運動の成果らしい。)

・ ラトナギリ Ratnagiri 多宝山 &グリッドラクータ山 Griddhakuta 霊鷲山
★★★★
入り口までは馬車で移動。
なるほど山賊が活動しやすそうな木の密度である。
このあたりは巡礼者の山賊襲撃事件があるというので、常に他の集団が視界に入る範囲での行動を心がけた。ところどころ軍人の警備が巡回していた。

ラトナギリの頂上には日本山妙法寺による仏塔と寺がある。
お寺の中では日本の若いお坊さんが太鼓を叩き法華経を読み続けている。近くに行って彼から甘い物の施しを受ける、のがここでの巡礼法らしい。金平糖的なそれをなめながら、我々が大都市の喧騒にもまれているときもずっと、インドの僻地の山の上で世界の平和を祈り続けている人がいるのか、と思うと、心が洗われる気持ちになった。

しかし、しばらくしたら彼はインド人と交代。インド人は適当に太鼓を叩きながら近くの人と雑談をはじめ、あっという間に醒めてしまった。

そして、グリッドラクータ山へ下る。
ここはブッダが法華経なんかを弟子に説いた場所。インド人の団体が集会を行っていた。欧米人数人が瞑想をしていた。
ここは周囲の密林を見下ろす環境が素晴らしく、心が澄み渡る。ブッダがこの場所を愛した一つの理由が分かったと思った。

・ 温泉のバザール & 洞窟の仏像 &リスクテイク ★★★
街に戻ると、馬車亭のすぐ裏にあるインドでは珍しい温泉に行ってみた。タオルなどなかったので、湯船のある方にはいかなかった。私の行ったところは足湯プラス流れるお湯という感じだった。インド人は一生懸命身体をあらっており、下にたまった水はちょっと粘るような気がする。その気はなかったが、インド人たちが催促するので、私も頭と手足を洗い流してすっきりする。マントラを唱えた後高いお布施を要求するエセ宗教者がここにもいた。

また、温泉からちょっとした丘に登ることができる。見晴らしがよさそうなので行ってみる。上の方に行くと、棒を持った制服姿の男が話しかけてきた。彼は軍の人で、この辺は治安が悪いので人々のセキュリティを守るのが仕事だと言いながらついてくる。それが仕事なら拳銃くらい持っていていいんじゃねーか?とちょっと不審を覚える。勝手についてこさせると、同じ仲間が二人加わった。ちょっと嫌な予感だ。

頂上付近に着いた。ここにはお寺があり、周囲に人がいる。もう引き返そうと思うと、3人は「ここから裏に下ったところすぐに洞窟があって、中にブッダ象があるから見にいけ」という。そこから先は人の気配がないので、いきなりこいつらが山賊に代わるケースが十分に考えられる。洞窟にも興味があったので、「こいつらについていっていいのか」と周囲の人に目で尋ねるが回答ナシ。何度か断るが、すぐそこだという声に押されて結局行ってみることに。

洞窟は確かにすぐにあった。そこに入る前に改めてためらわれたが、入る。すると案内人がいてろうそくに火をつけてくれた。ブッダ像は小さい物だが、暗闇に置かれていることで味がある。ここで寄付を要求される。抗しがたい感じだったのでやつらの懐に入るのがわかっていながら少額を置く。とりあえず無事に洞窟は出ないとまずいなと感じていた。さて、出ると予想通り軍人たちは金をくれといって取り囲む。とても理解しづらい英語で、言い分の理由は分からない。

彼らが本当に軍人ならば、給料もらって安全を守る仕事をしているのに、なぜ頼みもしない私がお金を払わないといけないのか分からなかったし、他にもインド人旅行者がいたのに、お金をむしれそうな人がいたらそこに集結してしまい、インド人のセキュリティは考えなくていいのか?というところが許せなかったので、お金は払いたくない。

しかし、この場でそういうことでもめると身に危険が及びかねない雰囲気と環境。とりあえず人の目のある場所に行こうと「後で払うよ。元の場所まで安全に送り届けるまでが仕事でしょ」と提案。
彼らは迂闊にもその話をすぐに飲んでくれた。

さて、人目があっていざとなれば逃げられる場所まで来たところで、改めて催促してきた彼らに 10Rp渡す。当然彼らは怒っている。でも「仕事でしょ?給料もらってるでしょ?不満なら返して」と言いはなって振り切った。

インドで相当用心してきた私が、意識しながらリスクを犯したのはこれが始めてであった。この後、少しずつ気持ちが緩んでいった気がする。

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